桐は、桐たんす以外にも様々な用途があります。こちらのページでは、桐たんすの用途を目的とした品質について記載しています。
どのような成育、どのような方法で良質の材料になるか、全貌を公開します。
桐は中国が原産地で、日本、アメリカ 、台湾、ブラジル、ニュージーランド、フランス等、世界中に分布し自生していったと考えられています。
昨今の世界で生産される桐材のほとんどは、成育の早さから自然自生より養殖栽培の方が圧倒的に多く、この為、品質の差が生じます。
私達は、〇〇産桐だから良い・悪いなど、漠然とした理由で評価はしておりません。人の相応しい判断によって、成育から板材になるまでの工程を正しく踏んでいるかが品質に大きく影響すると考えています。
この為、桐たんすとして信頼出来る材であるか、実際の桐材を見て・聞いて・触ってみて取引がスタートします。
栽培時にどのような事で品質の差が生じるかをご説明します。
まずは、桐には品種がありそれぞれ木質に個性があります。日本で栽培されている桐の主な種類は、ニホンギリ、チョウセンギリ、ウスバギリ、ラクダギリと言われています。
このように国内だけでなく、北米桐、中国桐でも品種が存在していますが、昔からある品種は品質が良く安定していると言われます。この時点では全て良材の素質を持ちます。
昨今の技術によって品種の組み替えが進んでいて、品種を掛け合わせ成育を早め5年程度で成木になると言われるハイブリッドな改良桐が存在しています。
この場合、身幅は成木と同じでも成育年数が5年のため一本の木から年輪は約5本となります。
成育が早いため、木目幅が広く全体的に柔らかい桐材となり、このような桐材はそもそも家具用途としては不向きのため、当社の桐たんすでは使用する事はありません。
[ 土壌差や気候 ]
植物の桐は生命体であるため水質や土の性質による土壌の質は影響します。桐は、土壌微生物が豊富で少しの砂利を含んだ粘土質の土壌で水はけの良い場所は最適地とされ硬質で艶のある桐が出来ると言います。また、比較的寒冷地で、日本で言う所の東北地方の緯度環境で育った桐は、生育が遅いため木目の詰まった桐材が出来ます。この為福島県では日本一良質の桐とされる会津桐が採れます。北米桐も国内桐と同様に高品質で、アメリカ本土のカナダ寄り(またはカナダ)の寒冷地で採れた桐は硬質であり国内桐生産者の中でも大変評価されています。世界の養殖栽培では土壌に人為的に養分を与え、極端に成長を促進するようなこともありますが、成長を促進させても結果として木目の詰まった美しい桐材には成りません。
[ 伐採の時期 ]
桐を伐採するには、循環性の観点から20年~30年頃で伐採するとちょうど良いとされます。一方、北米材は自然成育のため40年~50年物も存在し年輪の密度も大変詰まっています。
早くに伐採してしまえば年輪が少なく、細やかで繊細な木目は取れなくなります。
[ まとめ ]
良質な桐は古来からある品種を大切にし、比較的寒冷地で土壌が桐に相応しい状態であり、20~30年ほどの歳月を掛け、最低限の人の手とできる限り自然の力で成育した桐は良材と言えるでしょう。最低限の人の手と言えど、根まで光を届けるための草刈りや土壌保守などの作業はとても重労働です。
一方、温暖な気候で土壌環境に粘性が弱く、栄養を与えられ成長を促進させた桐 (品種改良桐含む ) を短期間で伐採した場合は桐たんすには不向きであると考えます。
この時点で、「桐たんす用途としての」材料の品質の差が生じます。
桐は大変アクが強く、黒ずみ色むらを引き起こしやすい材料です。木材故の気になる匂いや害虫の除去、材料の狂いをなくし安定化させる重要な工程があります。
ここからは当社の北米桐材の事例を用いて、伐採後から生じる品質の差を解説していきます。
[ 丸太養生 ]
伐採直後は変形が大きいため、丸太の状態で1年~3年の期間で養生する「木枯らし」を行います。
木枯らしの工程は、木材含水を減らし片寄った水分を分散させるため木材が安定します。
この手順が簡素化され製材を行うと、板材になった時点から極端に含水が下がるため余計な捻れが生じます。
当社では丸太養生済のものを仕入れています。
[ 製材 ]
丸太養生が終わると板材へ製材します。加工する際にも丸太の割り方にテクニックがあります。
丸太を単純に縦割りでスライスし自然の力強い板目を引き立てるカット方法と、丸太を縦割りでミカンのように割って繊細で美しい柾目を多く採る方法が有ります。
当社では美しい柾目を活かす後者の製材方法です。前者のカット数より4倍近く手間が掛かりますが、真っ直ぐ美しい柾目を得るには惜しみません。
製材の注意点としては、節や曲がり、傷などを見極め、無駄が出ないように、あらかじめどの部位に使用するか目的を決めた上で寸法を決め製材します。
[ 灰汁抜き ]
製材された材料は、アク抜き(渋抜き)の工程に入ります。
アク抜きの工程はとても重要です。桐はアクが多くとても変色しやすい材料です。
長年お使いいただく際に桐材から黒ずみなど変色が極力出ないようにするためにアク抜きをすることが、いつまでも美しい木肌が持続できる秘訣です。
また、木材故に匂いや害虫の懸念があるためアク抜きの工程によって殆どが解決します。
手法は一般的に3つあります。
①天日雨ざらしの自然養生のみでアク抜きをする方法。②水に浸してアク抜きをする方法。③温水を用いてアク抜きをする方法があります。
このアク抜きの技術は、会社ごとの考え方が違う部分でもあります。
当社の北米桐は、③の温水を用いたアク抜き処理を行っています。料理と同じように温水でアクを抜く事で比較的短期間でアク抜きができます。また温水により害虫を死滅させる事にも繋がります。
手順としては、釜に桐板を敷き詰め、2週間~1か月間、朝昼夕に釜の状態を見ながら50℃~60℃程度で湯加減を調整し、アクで水が濁れば入れ替えます。
これを5~7回程度繰り返し丁寧にアクを抜いていきます。 温水アク抜きに必死になってしまうと桐材がもつ油分も同時に失うため頃合いをみてアク抜きは終了します。
[ 乾燥と養生 ]
当社の場合は比較的、短期間の自然乾燥となります。九州という土地柄日光が強い場所であり、かつ温水アク抜きを行っているため天日雨ざらしで3ヶ月~6ヶ月程度、最終のあく抜きと自然乾燥を行います。時が経ち、晴天が続いた日に板材の心部まで乾燥したら次の工程に移ります。 40℃程度低温の人工乾燥室で、半年~1年の陰干し乾燥で徐々に桐材を慣らしていきます。その後、人工乾燥室から取り出し、倉庫養生で2~3年以上かけて自然の環境に馴染ませます。後に桐たんすへ加工の順番を待ちます。
[ まとめ ]
一連の流れをまとめると、温水アク抜き→自然アク抜き→自然乾燥→低温乾燥→倉庫養生と長い歳月を掛けて、立派な北米材が出来上がります。
このように当社の北米桐の製材視点からみると、この工程を疎かにしていると、桐の品質の差が生まれる要因になります。
どんなに良い丸太であっても、丸太養生を行わなかったり、アク抜きや乾燥、養生の工程が不十分であれば当然良品質にはなりません。
桐材の品質は明らかに人の手によって再現されるものです。
中国は、世界で一番と言って良いほど桐の品質格差の激しい産地です。中国本土の広さや気候風土、土壌、品種、生産性、幅広く影響を及ぼしています。
その中で特に品質に影響を及ぼしているのは生産性の向上です。生産性を上げるため、土壌を育ちやすく改良したり、品種の改良をしたり、製材や養生の工程を割愛し量産を行うこともあります。これは、桐が家具以外にも利用性があるため、全てにおいてこのような処理が行われているのではなく、家具や資材などの用途に応じて必要な手法が選ばれています。
部位によっては使い捨ての合板や建設資材など工業用途などにも使用されます。
では、家具用途における中国桐の品質はどのようなものがあるのでしょう。
中国桐には AA材・A材・AB材・B材・C材 のグレードが存在し大きな品質格差、価格格差があります。
・C材は、家具として徹底的なコストカットを目的として選ばれます。
・B材は、価格が安く最低限のクオリティーが有りますが木目は板目が中心で見た目は美しくありません。
・AB材は、柾目や板目が混合された材料で、B材に比べ品質が良いため、価格も少し高くなります。
ここまではコスト面で優れているため、一般家具の引出内部などの見えない所や、低価格帯の桐たんすで使用される事が多いです。
・A材は、最良部位の完全柾目の良材グレードです。中国桐の中でも品質が良く、価格も高くなります。
・AA材は、A材よりさらに木目が細かく直線的で最上級グレードになります。
家具用途の中国桐材は最低限の工程で量産されているためコストでは圧倒的に有利です。
その為、工程の簡素化によってタンニンによる黒いシミが桐材表面に出やすく、それを抑えるために漂白剤が使用されていることがほとんどです。
代表的な漂白剤は過酸化水素が使用されています。 (他に亜塩素酸ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウム・塩素化イソシアヌール酸系)
漂白材によって中国桐は白くなります。安価な桐たんすや桐箱が白いのはその為です。
過酸化水素はpH弱酸性系の溶剤で、この影響によって桐材が持つアルカリ性質が酸性質によって損なわれる恐れがあるため漂白材は推奨しません。
当社の中国材は漂白材が与える影響を考え、"A材以上漂白なし" をオーダーしております。
A材以上はそもそも品質が良く漂白の必要性はないほどなのですが、希に表面漂白をしてしまった間違ったロットも混ざります。
幸い桐は水分含浸が遅いため表面から0.5mm程度のみが漂白されているに過ぎないため、当社では万が一のそのミスを補えるように、輸入する際、
厚めにオーダーして1ミリ以上の削り込みを行っています。そのため表面の漂白剤成分は排除していますのでご安心いただけます。
当社では"桐たんす"を作っているため、確かな品質が何より最優先となります。
伐採地も拘り中国の桐の本場である、知識も経験も豊富な河南省や山東省で栽培された木材を使用しています。
輸出する側、私達輸入側も、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的とした、国際的な森林認証制度「FSC認証」が重視されてきており、当社でもFSC認証済みの中国材を使用しています。
最後に、もう少し細かくお伝えするとA材にも企業ごとに品質の差があります。そのため取引を始めるには、実際の桐材を見て・聞いて・触ってみて、信頼できる材料か、信頼できる企業かしっかり責任を持って判断させていただいております。完全自社で直接輸入する事で、私達の考える品質目線を伝える事ができるため、当社の中国桐は、北米桐材と比べると価格は1/3ぐらいとコスト面で優れ、機能性もほとんど劣らず、木目の出方、色味、強度など品質には満足いただくことができます。