特に印象的だった販売エピソードをいくつかご紹介します。
自分が嫁に行く時、親から婚礼箪笥を買って貰って嫁いだのに、我が娘の婚礼の時には、先様が箪笥は要らないと断られてしまいショックでしたが、やはり箪笥一棹だけでもと買いに来られたお客様がいらっしゃいます。
娘様は箪笥には興味が無く、ご両親も困り果てて私に娘を説得して欲しいと頼まれました。
そこで、ご両親に娘さんの見えない所に行ってもらって私が娘さんにこう言いました。
「お父さんやお母さんは、あなたの幸せを真剣に望んでいて、喜んでいるけどその反面寂しさも有るから、箪笥を持って行って欲しいと言うお父さんとお母さんへの最後の親孝行だと思ってみたらどうか」と話すと、娘さんも何かを感じてくれたのか、箪笥を見始めました。
そして、出来れば2棹置きたいと一人住まいの彼に電話して、「置く場所見て貰うから今日来て良い?」と話は急展開。
早速、マンションに行ってこの棚をあっちに置いて、これはこの向きにと置き場所の確認をして2棹のご注文を承りました。
そして、いよいよ配達当日マンションに着くと、お父様が門の前に待ち構えておられ、車は前進で入れて、部屋は駐車場側の入り口を入ってすぐなのですがチョット遠回りしてでも、マンションの正面玄関から入れてほしいと頼まれました。
そして、据え付けが終わり帰ろうとすると、嫁ぎ先のお母様が箱入りのお酒と赤飯をくださいました。
先様も最初は遠慮をされたものの、箪笥を持っての嫁入りを大変喜んでいただきました。
某御寺様より、お電話で部屋を改造して箪笥を3棹並べたいと言う事でしたので、置く場所の幅を測って、ある程度の図を手書きで書いていただき、FAXをお願いしました。
FAXが届いたので、希望される図を基に、図面を制作して文章を添えてFAXしました。
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その時の内容
○○様
この度はお問い合わせいただき誠にありがとうございました。
FAX頂きました図を基に内寸も入れて作図しました。
また、粗方のお見積りも致しましたので、ご検討いただきたいと思います。
尚、取り急ぎの返信と成りますので、図面はあくまでご参考と言う事で、変更点等有りましたらご遠慮なくお知らせください。
いよいよ制作の前にはお伺いして設置場所の確認等を致したいと思います。
以上、取り急ぎよろしくお願いいたします。
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翌日、FAXが有り内寸について変更が有ったので、もう少し詳しく知るために電話をして、変更の確認と提案をさせていただき再度作図をして、FAXをしましたが、その時に添えた文章は「図面での変更は何回でもできますので、お届けした図面をしばらく検討していただいて、変更点が有れば再度作図いたしますので、よろしくお願い申し上げます。」
そこから、お客様の変更とこちらからの提案を5回ほどやり取りして、形が決まり、設置場所の確認に行きました。
設置場所を見せていただくと、窓側で西日が当たるためカーテン設置についてや、実際入れる着物のサイズが内寸ギリギリだったので2cm広げる等若干の変更が有り、最終図面を後日郵送して決めていただきました。
お客様も、「よく私の意見も取り入れながら、和光さんの専門的知識で形にしていく共同作業が楽しいですね。完成が楽しみです。」と大変喜んでいただき、後日完成して納品した箪笥を前にしたお客様も、大変満足されているようで、終始笑いの絶えない納品でした。
ある若い女性で、当社の一間箪笥を購入された方のエピソードです。
当社に来られた時は原付バイクで来られて、近所の方かなーと思ったら県外ナンバーには驚きました。
ショールームに案内して、ひとまずお茶を飲んでいただき、ゆっくりお話をすると、その女性は、両親と3人暮らしで、普段は工場勤務で毎朝弁当作って原付バイクで通勤されて、仕事を始めて無欠勤と言う事でした。
女性の楽しみが着物で、いろんな出費は抑えつつあまり高価な着物は買わないらしいのですが、少しずつ買っているそうです。
そして、究極の夢は節約をしてお金を貯めて桐箪笥を買う事、しかも一間箪笥と決めていたそうです。
ショールームに来られた際、長年の夢が叶うという思いと、嬉しさがヒシヒシと伝わってきました。
箪笥を決めていただき、お届けすると自分の部屋に置きたいとのことなので、箪笥を据え付けました。
夢の桐箪笥を買った満足感はなににも勝る喜びが有るんだと思った次第です。
とある奥様のお話です。
「主人と結婚して、共働きしながら子供たちを大学までやり、その後私はまだ働いていますが主人は退職し、家のリフォームをしました。
人それぞれ人生には楽しい事や苦労も有りますが、その時々で着物を作り今では子供たちも自立して出てしまって、部屋も空いていて、私と子供達の着物がそのまま有るので、着る機会がきた時のために、きちんと保護しておきたい」との事でした。
奥様の子供達への優しい気持ちが伝わり、ほっこりしました。
婚礼用として、ある家具屋さんから注文の桐箪笥を納品した時の出来事です。
私どもは、家具屋さんと一緒に婚礼箪笥として直接お客様のお宅に納品する場合が有りますが、ある配達の際、箪笥を座敷に置いて帰ろうとすると、「まだ帰ったらダメ」と家の方から言われました。
しばらくして、座敷に上がるように言われて入っていくと、祝い膳が15人分ぐらい用意してあり、座るように言われて遠慮気味に下座に座ると、お客様が、あなた達はあっちと上座に座らされました。
しかも、床の間を背に真正面(;’∀’)
よくよく聞くと、「婚礼箪笥を運んで来た貴方達は、幸せを運んで来てくれたので上座に座るのが道理。」と言われて何となく落ち着かずに食しました。
お客様が25年ほど前婚礼の時に当社の桐箪笥を親に買って貰って、娘二人で姉はすでに嫁いでいて、妹が婚約したので、二人の娘に桐箪笥を買ってあげたいと言われました。
一通りショールームを見ていただくと、お客様が「あーーこれこれ」と指さしながらびっくりされている様子。
実は25年ほど前に買ったものが、今でも作られている事に感動されていました。
「当時からすると、見えない部分ですが仕様変更等や値段も当時からすると値上がりしていますが、外観は今でも同じ形で作っています。」と言うと、娘たちにもこれ持たせたいと即決。
同じものを親子で持てる事で、嫁がせても繋がっていると言う気持ちがヒシヒシと伝わってきました。